麻布の閑静な住宅街に計画した、陶芸家のための都市住宅である。
STUDIOFUUでは、空間の構成を通じて、人の感情や創造性に働きかける環境を追求している。人の感情は、光や風、素材、空間の広がりや閉じ方といった環境との関わりの中で喚起され、やがて具体的な行動の源泉となる。だからこそ、空間を単に機能を満たす器としてではなく、人の感情や行動に潜在的な可能性をもたらすものとして捉えている。
そのために重視しているのが、空間の質を階層的に切り替えるとともに、平面的にも緩やかに移り変わる構成をつくることである。
敷地に余裕のない都市住宅では、庭や緑地を確保することが難しく、空間に多様性を生み出すことにも制約がある。本計画では、平面を斜めに分割することで外部空間を確保し、光や風、内外の関係に変化をもたらす構成とした。斜めに面を向けることは、光を受けやすくするだけでなく、中庭と内部空間に矩形とは異なる奥行きと広がりを生み出すことにもつながっている。
1階には陶芸スタジオを、2階と3階には住空間を配置し、制作の場と暮らしの場を階層によって分けた。
1階では、斜めのラインによって駐車場とアプローチのための外部空間を確保するとともに、スタジオと街との関係を調整している。スタジオは道路や通路に対して完全に閉じることも、全面的に開くこともせず、面の向きによって視線と距離感を整えた。セミプライベートな空間として、街とのつながりを保ちながら、制作の場としての落ち着きも確保することを意図している。
また、1階は光が入りにくい一方、道路に面した部分には比較的明るい領域をつくることができる。この光の強弱を生かし、奥に作業エリアを、明るい側にサロンスペースを配置した。制作に集中する時間と、人を迎え入れ、交流する時間。それぞれに適した環境を設けることで、ひとつのスタジオの中にも異なる空間の質をつくり出している。
2階と3階の住空間にも、斜めのラインを取り入れた。中庭と内部空間が互いに関わり合う構成とし、内外の境界に奥行きと変化を生み出している。3階には寝室を配置し、斜めのラインから光と風を導き入れた。
同じ敷地の中で、階層ごとに異なる空間の質をつくり、さらに平面的にもその質が緩やかに移り変わる。こうした空間の重なりや連続が、暮らしと制作に多様な時間をもたらし、そこに身を置く人の感情や行動を喚起する。その先に生まれるものをあらかじめ決めるのではなく、新たな発想や創造的な行為につながる可能性を、空間の中に内包することを目指した。