田園風景が広がる森の中に計画した、ワーケーション施設である。
コロナ禍を経て、働く場所や時間に対する価値観が変わり始めた頃、仕事と余暇を自在に行き来できる環境として、ワーケーションが広がりつつあった。本計画では、森に身を置きながら仕事に向き合い、気が向けば自然の中で過ごす、そんな時間のあり方を建築によってかたちにしようと考えた。
建物をL字型に配置することで、敷地に二つの異なる領域をつくり出した。L字に囲まれた内側は、宿泊者が集い、食事や交流を楽しむパブリックな領域。一方、建物の外側には、客室から森や田園風景を望むプライベートな領域を設けた。人々が集う場所と、一人で過ごす場所。互いに隣り合いながらも、それぞれ異なる性格を持つ空間として計画している。
中庭に面したダイニングエリアは、宿泊者同士の交流を促す開放的な場所である。屋根の勾配を中庭側に向かって下げ、軒のラインを低く抑えることで、建物の圧迫感を軽減した。建物が壁のように立ちはだかるのではなく、その向こうに空や樹冠が広がる。人々が集う場所だからこそ、周囲の自然を遮ることなく、開放的な居場所にしたいと考えた。
一方、客室に入ると、屋根の勾配に沿った天井が風景へと視線を導く。部屋の間口いっぱいに窓を設け、景色に向かってデスクを配置することで、森や田園の中で仕事をしているような感覚を生み出した。また、デスクは小上がりのベッドエリアまで連続させ、椅子に座って作業することも、床に座ってくつろぐこともできる設えとしている。
中庭で人と交わり、客室では風景に向き合いながら仕事に集中する。あるいは、気が向けば仕事の手を止め、森の中を歩く。
そのときの気分に応じて過ごし方を選び、仕事と余暇、人との交流と一人の時間を自由に行き来できる。そんな環境を、建築の配置と形態、そして室内の設えによってかたちにした。